日誌 八月

1日、木。「絶園のテンペスト」を見始める。ご都合主義で胡散くて耐えられなかったが、5話まで見るとハマってしまう。前に見た最近の連続アニメだと、「あの花」に続いて岡田麿里が脚本。

2日、金。渋谷へ。かき氷を食べる。ラーメンを食べる。デートだった。「インフレーション宇宙論」の続きを調べる。

3日、土。「天空の城ラピュタ」を観る。傑作。乱気流に突入していくシーンにおける初々しい描写が好きなのだが、それは「風立ちぬ」における関東大震災の亀裂に通じる。そして「エヴァ」ともどこか通じている。「宮崎駿×半藤一利」を観る。高齢化社会はいいものだ。宮崎駿堀田善衛司馬遼太郎など先人と語ることを創作の源流としていた。(この対談本を立ち読みしたが宮崎が語る部分は殆どなく、鼎談としてはつまらなかった)そして半藤を得た。昔なら無理だっただろう。半藤は久しぶりに編集者の感覚に戻ったといった。天才が今の日本にも居ると分かったという。宮崎の母親は文藝春秋の愛読者で、戦後になり知識人の言動が変化したことに憤っていたといい、駿と論争にもなったという。「田中泯フランシス・ベーコン」を観た。ベーコンはどうでもよく、田中の畑仕事をいつまでも見続けたかった。

12日、月。「誰も戦争を教えてくれなかった」読了。素敵な本だった。「中国化する日本」以来の新しい本のスタイルと文体に触れた感じ。内容より何よりその明け透けな語り口に魅了される。脚注を楽しく使い、平板な描写でもたつかせない。加藤典洋が推薦文に書くようにこの素直さこそ、届かせるために必須の方法なのだと思う。現に自分には届いた。とくに、沖縄の施設と遊就館など思想的には間逆であろう施設が同じ業者によって空間がつくられているという記述に驚く。ももクロとの対談も、編集的に意味が付与された、意味あるものになっていた。戦争博物館ミシュラン含め、全体から考えぬいた末に新しいものができたという感じが漂う、本の可能性に開かれた一冊。おすすめ。

13日、火。蓮實重彦柄谷行人の対談集を読み始める。批評の定義は倫理だと言っているのが面白い。そしてそれはまったくその通りだと思う。たとえ形式が批評でなくとも、批評的なものは批評的なのだとおもう。だからこれまで批評的と言われるものに親近感がわかなかったのだとも言える。なぜかって、周りには目を凝らせばいくらでも批評的なものに溢れているからである。モンスターズ・ユニバーシティを観る時、そこにはいくつもの批評的な目線があることに気づく。批評批評おどろおどろしい日本のウェブなど見ずとも、そこには倫理があるのだから、それ以上何もいう必要はないのである。吉本隆明をしつこく蓮實がひく。吉本のような玄人になろうとしても難しい。人は飽きるからだ。これは大問題だ。人はどうしたって飽きるこれを考えなければならない。吉本は飽きずに「深く」論じていく。対象との関連の切り結び方が、大江における精神分析医のようなものだ。特に初期の対話が面白い。逃走のエチカになると、もう固有名のない「飽きた後の対話」になってしまっているから。人は飽きるから、飽きた人は見たくない。飽きない人の異常性こそ、人は楽しみたい。それは人間になる前の天使の姿だろう。

14日、水。重松清はすごい。業師だ。阿久悠が書いた甲子園球児への詞を追ったNHKの番組。阿久悠がいいし、重松もいい。重松はentaxiの長編インタビュー(というかもう重松の作品)がいい。最新のものは、いとうせいこう。出だしからシて素晴らしい。前号の是枝裕和もよかった。

15日、木。蓮實重彦柄谷行人の対談読了。蓮實の熱さがいい。

16日、金。アニー・ホールブニュエルの対談。

17日、土。【憧れのアメリカ】オリバー・ストーンアメリカ史を見ている。めちゃくちゃ面白い。とくに3話までが最高だった。そしていまは6話までみた。6話はキューバ危機とベトナム戦争について。フルシチョフケネディの類まれな指導力。ストーンの支持したい政治家なのだろう。憧れのアメリカの思いを 「千里の道も一歩から」。ケネディ暗殺の翌年、フルシチョフが辞任。ケネディの後、ジョンソンが大統領に。火野葦平のドキュメンタリーを観る。

p200 保管場所もないし、記録・保存に情熱を感じている人もいません。あるいは、商売が優先していて、歴史を作っているという自覚に乏しいというようなことがあるのかもしれません。悪くいえば、保存に値するような作品を作っているつもりがないというのが実情でしょうか。『白雪姫』以来、すべての長編に使用された絵がきちんと整理・保存されているでぃずにーとは、たいへんなちがいです。

p221 忘れてはならないのは旅行家としての大塚さんです。旅行こそ大塚さんの好奇心を最大限に発揮できる機会でしょう。大塚さんの聞き上手m話し上手はけっして国内に限定されるものではなく、外国でも行く先々の言葉を真っ先に覚え、そのややブロークンな言葉を駆使して、並みの人には味わえない経験をたっぷり仕込んできます。