2012年6月ーコラム・セザンヌ・ヴィダルサスーン

今日は、国立新美術館セザンヌ展大エルミタージュ美術館展(ドイツ文学者・中野京子氏の講演「エルミタージュ 女帝の時代」も聴けた)、カイカイキキ悪夢のどりかむ展を観てきた。あと、UPLINKでヴィダル・サスーンを鑑賞。


退屈な駄作。勲章を獲ったからエライんではなく、エライから(才能を研鑽したからこそ)勲章を獲るまで至るんである。そこを履き違えたドキュメンタリー。最後の方は、ヴィダル・サスーン氏が讃えられてドヤ顔してるシーンの連続で見るに耐えなかった。残念。そうなると、ドキュメンタリーとはなにか、ってのは考えてしまうよね。その分野のその人だからこそ見せられる、こちらが想像できないでいたような、ほとばしる何かを見せてもらいたいよね。それさえあればただただ嬉しくなれるんだから。『ハート&クラフト』っていう、エルメスの職人を描いたドキュメンタリーをこちらも渋谷でこの前みた。1時間足らずの作品だけどウットリしど押し。何があっても生きていこうと思わされる作品。日本の職人さんを折りに触れ見る(テレビや本で)機会があるけど、それとはちがった感触を受けた。もちろん、職人にも分野や外からの視線は異なる。ただ、職人が自分の仕事に誇りをもっているという言説が、外にもっと届いてほしいと思う。ブラック企業などの言説は、実名匿名どちらもかまびすしく飛び交うなかで、ちがった理路をできることなら開いていきたいよね。

ヴィダル・サスーン自伝

ヴィダル・サスーン自伝


悪夢のどりかむ展。
「村上隆の新たな美術概念とは?『悪夢を生きろ!ナイトメア』」 - ニコニコ動画:Zero
美術館のステイトメントは正直わけわかんないものがおおい。抽象的だったりやる意図が響いてこなかったり。その点、村上隆のステイトメントは、それだけで美しい。というか、やる気からちがう。ステイトメントを読めた(&リーフレットでくれた)だけで行く価値はあった。行った時はライブペインティングと作家さんのust放送をやっていて、ただ展示するだけでなくって、やれることを全部詰め込む感じにも、共感できた。作品はおもしろいものもおもしろくないものもあったのかもしれないが、六本木から道順を間違えまくってヘロヘロになりながら徒歩で辿りついたのと、当日既にセザンヌとエルミタージュを観ていた疲れから、足早に見てしまい、強い感情を抱くことはなかった。NABABAさんの作品は単純によかった。


世界の終わりのものがたり展。(行ってない。映像みただけ)
アートを楽しむ環境ってもっと変化あってもいいよね。その点で、ニコニコ美術館として解説者とゲストと共に展示を放送する試みはおもしろい。今回のゲストは東浩紀氏。
最後まで見通す。子供がしっかり色々考えていて、展示ってこういう子供にも、やる方次第ではちゃんと届くんだと感心した。学芸員さんは、構成するのはきっと楽しかっただろうが、苦労されたとおもう。同行して解説するなら、そこへの配慮がもう少しあってもいい気がした。労う的な。すでに大人であり、もつべき疑問が定型化してしまった人間への疑問が中心の展示であるという、東氏の意見には成る程と思わされた。


セザンヌ展。

めちゃくちゃよかった。塗りたくっていた。うまく言葉にできない。そもそもうまく言葉にしているであろう先行の言説にまだ全然触れていない。言葉との往還関係にもっと触れていきたい。絵画にしろ、音楽にしろ、映画にしろ。

自画像。

ユリイカ2012年4月号 特集=セザンヌにはどう視えているか

ユリイカ2012年4月号 特集=セザンヌにはどう視えているか

こちらが目次平倉圭さんの「多重周期構造 セザンヌクラスター・ストローク」がめちゃくちゃ面白い。こんな美術批評ができるんだね。でてくる用語が独自性にあふれているし、海外の論文を駆使しているのでレファレンスにもなる。

先日亡くなられた吉田秀和さんの著作。

セザンヌ物語―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)

セザンヌ物語―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)

大著すぎて手が出せていない。読み終えたらここに追記で感想を書きたい。

NHKの追悼番組「吉田秀和さんをしのんで」。
小澤征爾 / 片山杜秀

片山杜秀といえばこの著作がめっぽう面白かった。『未完のファシズム』はこれから読む。

片山杜秀の本(1)音盤考現学 (片山杜秀の本 1)

片山杜秀の本(1)音盤考現学 (片山杜秀の本 1)


エルミタージュ美術館展。

講演をきいた中野氏の著作。印象派の話が興味深かった。
国立新美術館の次回企画展は、「具体」―ニッポンの前衛 18年の軌跡。具体が立て続けに脚光を浴びてるね。こういうムーブメントは、いつか蕩尽されてしまうのかな。

ナチスのキッチン

ナチスのキッチン

絶対読む新刊! たのしみすぎる。

社会学 (ヒューマニティーズ)

社会学 (ヒューマニティーズ)

これもよも。岩波書店ヒューマニティーズ・シリーズはおすすめなんである。
哲学(中島隆博) / 歴史学佐藤卓己) / 法学(中山竜一) / 教育学(広田照幸) / 経済学(諸富徹)
女性学/男性学千田有紀) / 外国語学(藤本一勇) / 政治学苅部直) / 古典を読む(小野紀明
社会学(市野川容孝) / 文学(小野正嗣

コラム。

小田嶋隆のコラム道

小田嶋隆のコラム道

評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」

評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」

評伝をきっかけにナンシー関のコラムを初めて読む。
ナンシー関の消しゴム版画集 - NAVER まとめ
サブカル専門でない著者がほんのきっかけからナンシーの来歴を辿るという状況がまず本書を特別なものにしている。だから、著者は生前のナンシーと関わりがあったわけではない。ナンシーとの交流がないことが評伝を貧しくすることはあるのかもしれないが、だからこそナンシーが書いたものから、彼女が誰なのか、書いたものは何なのか必死に捉えていこうとできるわけだし、色んなかたちの評伝のあり様が増えれば面白いとおもう。

信仰の現場―すっとこどっこいにヨロシク (角川文庫)

信仰の現場―すっとこどっこいにヨロシク (角川文庫)

誰かが枠組み拵えないと腰は動かないもの。ナンシーがテレビ評だけになる前の仕事。

POPEYE (ポパイ) 2012年 07月号 [雑誌]

POPEYE (ポパイ) 2012年 07月号 [雑誌]

リニューアルしたポパイ。これの田原総一朗のコラムがやばい。
まじでやばい。巨人すぎる。今号では劇評をやってるんだけど、日本でもここまで書ける人あんまりいないんじゃないか?なんでも、蜷川幸雄の演出作品はだいたい観てきてるという。
やけのはらのコラムも味わいあってなかなかよい。前回はタモリ、今回は伊丹十三

証言構成『ポパイ』の時代―ある雑誌の奇妙な航海

証言構成『ポパイ』の時代―ある雑誌の奇妙な航海

こんなのみつけた。


ジョン・ケージの『4分33秒(4'33")』に取り掛かろうと思うのですが、どう練習したらよいですか? - Yahoo!知恵袋
wikipediaがなかなか詳しい。

再審決定 マイナリさん強制送還へ - 社会ニュース : nikkansports.com
「東電女性社員殺害」再審―警察・検察・裁判所「マイナリ犯人シフト」の恐ろしさ : J-CASTテレビウォッチ
マイナリ氏の家族・弁護団 記者会見
釈放が決まった。よかったなあ。ひどいよなあ。15年は長いよ

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判

別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判

佐野眞一g2の連載が単行本になっている。



フェルメール全37点が展示中だという。(ホンモノじゃないやつがですよ)
フェルメール光の王国展 ーフェルメール・センター銀座 Vermeer Center Ginza
フェルメール・センター銀座も、予想した以上に面白かったね。フェルメールの全作品を一挙に見るなんてことは普通できないんで、いろんなサイズの作品が並んでるのを一望するだけで面白い。むろん複製なんだけど、すごく精密だし、額縁まで本物そっくり。福岡伸一館長の独自の視点からの解説も参考になるし。ただ、詰めかけた来場者が競うように複製を写真に撮ってたのは妙な感じがしたけど(笑)
行ってみるかなー。
改装が済んだ東京都美術館でのマウリッツハイス美術館展ももうじき始まる。駅などでダッサイポスターを目にするけどもうこの路線じゃないと美術館は人を呼べないとおもってる人がデザインしたりコピーライトしてるってことだよね。やだな。gggとかで例えば田中一光のポスター展に人がいっぱい来るわけじゃん?たぶんオシャレなデザイン系とか広告代理店の人も行ってるわけでしょ銀座だし。だとしたら、今の時代にも後世そう思われるような、つまり、展示されるようなポスターを存在させようという欲求に結びついてもよさそうなもんだけど、そうはならないのかな。スタンダードにシンプルなものか、客受けを狙った見てられないようなものか二極化してる傾向にあるとおもう。ストリートの、それこそZINE作りとかに励んでる人なんかのデザインは、昔とくらべて相当レベルがあがってるわけよね。取り入れがまだ進んでないということなんでしょうね。あとは知識なくて知らないのだが、東京都現代美術館展とかが海外を巡回したことってあるんだろうか? 博物館的な美術館が日本の昔の日本画を巡回ってのはありそうだけど、現代美術に関して所蔵作品に価値があると外国の視点では思われてるんだろうか?





第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本代表作家及び日本館キュレータ―決定のお知らせ
キュレーターは東京国立近代美術館美術課長の蔵屋美香さん、作家は田中功起さんに決まった。

キュレーターステイトメントには、

今回のプランでは、アーティスト、田中功起の映像作品とインスタレーションにより、「他者の経験を自分
のものとして引き受けることはいかにして可能か」というテーマに取り組みます。(中略)さまざまな大小、濃淡で震災を経験した者同士が、あるいは遠く離れた国や地域に住む人々が――ビエンナーレを訪れる観客の大半がそうでしょう――、または時間を隔てた後代の人々が――今回の震災に限らず、戦争をはじめ、厄災はこれから幾度でも起こりえます――何らかのかたちで経験を共有するための可能性を探ることはできないでしょうか。

会場構成の概要としては、

震災のさまざまな側面に直接的、間接的に言及するいくつかの「練習問題(exercise)」を設定し(中略)これらの「練習問題」への取り組みを、複数の人々から成るグループに依頼し、協働作業の過程を 10
本前後の映像作品にまとめ(中略)これらの映像を、指定された素材(毛布、アルミシート、木材)のみを用いて建築関係者のグループがデザインした個々の作品用のブースに展示

するとある。
日本代表が発表されてから、ネットを中心にして、多くの議論がなされている。
どんな展示内容になるかすごく楽しみだ。できることなら現地にみにいきたい。



こちらはどうなるかな。いくとこまでいってほしい。
東京新聞:美術館とロックの融合 横須賀で9日から「ラルク展」 :神奈川(TOKYO Web)